関係者インタビュー
和田公民館 館長 村宮博明
和田の風景と人々
私は和田に生まれ和田で育ちました。和田を離れて いた9年間以外の、約60 年は和田に住んでいます。 高度成長期の和田浜には、最大で約100万人の海 水浴客が来ていました。今は、激減して 20万人を切っ ています。 子どものころ、私の実家は民宿をしていましたが、自分の寝る部屋もないほど賑わっていました。今も夏 はたくさんの海水浴客がおとずれますが、夏が終われば人っ子一人いない浜とのギャップが私は好きです。 その風景や雰囲気の違いが、大好きなんです。人がいない季節も寂しくはありません。その寂しさがいいの です。 和田地区の人は、海や浜が大好きです。昔から和田地区の人は、浜を大切にしてきました。代々浜を キレイにする気持ちを、引き継いで来ているのです。年に何度かの「浜掃除」にも、地区のほとんどの人が 参加することを当たり前と思っています。ですから、今でも海の水も、海底が見えるほどキレイです。 海以外も和田の風景は、とても美しいと思います。私も、いろんな所に行きますが、自画自賛ですが、 和田より美しい風景を見たことがありません。白い砂浜、透明度の高い海。島の向こうに見える若狭富士 とも呼ばれる青葉山に沈む夕陽。時として「海霧」がかかった幻想的な風景も見られます。私は暇があれ ば和田の風景写真を撮っていますが、ずっと見ていても飽きない和田の景色は大好きです。
公民館の活用
公民館ではいろいろな講座を実施しています。子どもを対象にした講座では、磯や川に行ったり星空を 見たりして自然に親しむ講座です。「和田の自然を大切にして欲しいことと、素晴らしい風景を美しいまま 引き継いで欲しい」からです。 従って、これからも子どもを対象にした「環境教育」を、もっともっと進めて行きたいと考えています。この素 晴らしい環境を、100年後も残したいからです。和田に住む大人も子どもたちも、海がキレイなことを当た り前のように思っています。素晴らしい町に住んでいることに、気づいていない人が多いのです。だからこそ、 一度海を汚すと元に戻すことが大変なことや、先人たちが海をキレイに守ってきたことを伝えていかないとい けないのです。 そこで夏休みには、「川の生き物調査」や、「磯の生き物調査」を実施しました。自分たちの住むところに どんな生き物たちがいるのか、を身近に感じて欲しいからです。 子どもたちが嬉々として生き物を捕まえているのは、見ているだけで気持ちが爽やかになるのです。川には 「絶滅危惧種」の魚がいます。海には危険な生き物が棲息していることを、学ぶことも大切だと思うので す。 和田小学校では、今年は5月に5年生が授業で「砂浜の生き物調査」をしました。水際には小さい魚 やヒラメなどの稚魚がたくさんいます。稚魚のうちはこんな身近にいる生き物を発見することで、磯を大切にしなければいけない理由も学んで欲しいのです。
小学校との連携
公民館としては和田小学校と、連携して事業を実施することもあります。「磯の生き物調査」は、学習を 学年全員で実施することは危険を伴い難しいのです。安全管理の体制がしっかりしていないと、実施する ことはできません。そこで和田地区にいるたくさんの「ライフセーバー」たちに協力してもらうことで、安心安全 に講座を実施することができています。彼らはとても協力的で、喜んでイベントのサポートをしてくれます。ま た「川の生き物調査」では川の環境を守っている、グリーンネットや営農組合のみなさんの協力があります。 そんないろいろな組織と連携することで、子どもたちの磯や川での環境学習が実に安全にできる体制があ るのです。 公民館の役割は、講座を実施し交流の場を作ることでもあります。高齢の方が子どもたちの「盆踊り」の 講座や「川」の講座を、サポートに来てくださいます。田植えや稲刈りや餅つきやしめ縄作りにも、たくさんの 方がサポートしてくれます。和田の地区の皆さんは、「地域の子どもたちは、地域のみんなで育てよう」とい う意識が強いように思います。和田小学校の行事や登下校のボランティアは、年間で 1,300 人を超えま す。学校と地域の「絆」が強い証だと思います。 私の前職は高校の体育の教師です。そこで学校からの依頼もあり、年間に 10 回程度の出前授業や 親子レクリエーションにも行っています。そんなこともあってか小学校は私の思いや活動に理解があるような ので、これからも連携しながら「環境学習」を進めていきたいと思っています。
公民館の課題
今、和田公民館の活動は、70歳以上の高齢者に依存しています。全国的にも公民館活動の課題は、40代や50代の人にどう関わってもらうか、にかかっています。彼らが公民館活動に興味を持ってくれれば、 活動の幅は大きく広がります。しかしながらいろいろなアイデアを出しても、なかなか参加してもらえないのが 現実です。 公民館には「放課後児童クラブ」があります。日々、子どもたちと関われることで、学校との連携や地域と のつながりもできます。気が長い話ですが、この子たちが将来公民館活動を支えてくれる柱になり、課題の 克服につなげてくれることを楽しみにしています。
ブルーフラッグと地域住民
今はまだ、住民は「ブルーフラッグ」についての理解は、あまりできていないように思います。住民から「ブル ーフラッグ」について聞かれることがあるように、活動を知る人は少ないようです。「ブルーフラッグ」の話が急 に出てきたこともあり、認識されていない状態と言えます。従って、これからはもっともっといろいろいな機会を 通して「ブルーフラッグ」のことを伝え、取得を目指したいと思っています。
認証取得に向けて必要なこと
ブルーフラッグ取得のネックになっていると考えられているものに、「ロケット花火大会」があります。今年の「ロケット花火大会」の翌日に砂浜の「キレイさ」を測定したら、D 判定だったそうです。私も一緒に浜を掃 除し問題はないと思えたのですが、それでも問題があったのです。いつもはA判定だったそうですが、砂浜に 這いつくばって拾ったにもかかわらず、D 判定だったのです。「ブルーフラッグ認証」を継続することは、とても 労力が必要だと痛感しました。しかし、「ブルーフラッグ認証」の継続のために、住民に負担を強いることは できません。なぜなら、負担が増えれば「ブルーフラッグを取る必要があるのか。取る価値があるか」という、 話になりかねませんから。 現在、ブルーフラッグ推進部会では、「ゴミ問題」や「犬問題」について話をしています。「ゴミ問題」につい てはライフセーバーを中心に、観光客を対象に分別や浜をキレイにする活動への巻き込みをしています。ま だ十分とは言えませんが、少しは成果が出ているようです。「犬問題」については、来年取得を目指すのな ら、今年から浜に入れなくなることを周知徹底すべきではなかったかと思います。地域の人は、朝夕の散歩 がほとんどなので、問題はないと思います。しかし、観光客は、犬を砂浜に入れたり、中には海水浴場で 泳がせたりしている人もいます。周知できていないのに、ブルーフラッグを取得して突然ルールができると、問 題が起こる可能性があることを心配しています。今後は、観光客や住民の意識を高めていくことが大切だ と思います。 ブルーフラッグ取得のために必要な33項目のうち、和田海水浴場はそのほとんどをクリアしています。しか し、ブルーフラッグを取得し継続するためには、浜茶屋の方の協力は不可欠です。浜茶屋の方が浜の掃 除をし、ドラム缶のゴミを分別しています。観光客は分別が面倒なのか、ドラム缶の周りに置いて帰ります。 観光客に分別してもらうことを徹底しないと、浜茶屋の方の負担は大きくなるばかりです。地元の人が分 別をするのではなく、観光客に自分たちで分別してもらうことです。ブルーフラッグを取得したことで浜茶屋さんの負担ばかりが多くなると、もうブルーフラッグは要らないという ことにもなりかねません。捨てられるゴミのほとんどはコンビニからのものや、自分たちが持って来て不要になっ た壊れたテントや BBQ コンロであることに問題がありそうです。浜茶屋さんが販売しているものはごくわずか で、捨てられる多くのゴミは浜茶屋さんの負担になっているのです。 大変なことかもしれませんが、しばらくはゴミの分別の指導員のような存在が必要かもしれません。お願い すれば一部の心ない人々をのぞいて、家庭ゴミでも分別をする習慣はありますから、やってもらえるようにな るように思います。観光客に「自分たちの浜」という気持ちを持ってもらえるようになれば、ベストなのですが それはなかなか大変なことです。「ブルーフラッグ推進部会」には実に様々な人が参加しています。従って、多様な意見を聞くことができる 仕組みはできています。和田地区の人々は利害に関係なく、ものが言える人が多いことが幸いです。個 人的には住民の意識が浸透してから取得しても、遅くはないと思います。ただ、私たちはこの素晴らしい 「海」の町に住んでいるということに、すっかり慣れてしまっていると思います。「ブルーフラッグを取る」ということ は、そんな「慣れ」から私たちの目を覚ましてくれるような気がします。そういう意味で早期に取得することは 大切で取得をきっかけにして、地区の人に「高浜の海」の素晴らしさを再認識して欲しいと思うのは、私だけでしょうか。
【インタビュー協力】環境省中部環境パートナーシップオフィス(EPO中部)