関係者インタビュー

高浜国際交流協会 会長 池田充宏

和田の変化

私は高浜町の和田地区出身です。4年間程関 西やアメリカ合衆国で生活していましたが、今は実家 に戻ってきて、和田地区内に住んでいます。 和田地区の様子には「波」があります。昭和30年代の和田地区は、お金持ちの方々が、一家揃って長期滞在をする避暑地であり、たくさんの別荘がありました。私が小学生の頃は、3 人以上ならば子ども 達だけで海水浴に行くことが出来ました。もし1人が溺れたなら、1人は助けを呼びに行き、1人は溺れた人を見ているように教わりました。小学生の頃の和田地区は、田舎の和気あいあいとしたビーチでした。その後、子どもが海水浴に行く際は、保護者など責任者の同伴が必要になりました。 昭和 40~50年代に観光客が増加しました。道路が整備され、車での日帰り客が増えました。週末に は一晩中暴走族が走りまわっているような状態でもありました。 観光客がたくさん来ていた時代が必ずしも良かったのかどうかは疑問です。白浜海水浴場ではたくさんの 観光客が来る時代は過ぎ去り、ずっと和気あいあいとしたビーチのような時代に戻っています。お金持ちが 来る時代から、多くの観光客が来る時代、今は「海が好きな人」が来る時代になりました。浜茶屋を営んで、27年になりますが、観光客が多く来ていた時代には、どこに人が座っていたかがわかる ほど多くのごみがその場に捨ててあり、アルバイトの一日の最後の仕事は、観光客の残したごみ拾いでした。 今の観光客は、90数%の人がごみ箱にごみを片付け、カンやペットボトルを放置して帰ることがなくなりま した。海が好きな人はごみの片付けをします。「海が好きで来ているから、海を汚くしたくない」と言っていま す。たくさんの浴客が海に来ていた頃は、「夏だから海へ行く」という気持ちで来ている人が多くいて、必ずしも海が好きという理由で来ていたわけではなく、自分が海をきれいにしなくてはいけないとは考えていなかったのだと思います。 駐車場の経営は浜茶屋を始める10年前、37年前からしています。以前は、7月中はきれいで、ごみを拾う必要もありませんでした。しかし、8月からお盆の時期には、駐車場の車の両脇がゴミだらけになってしまうようなモラルの低い人がたくさん来ました。主観的な見方ですが、海が好きな人は7月になるとシーズンを待ちかねて海に来るのですが、8月に来る人の多くは、海がそんなに好きなわけではないけれど、夏なのでとりあえず海に来るという人が多いので、ごみを捨てていく人も多くなる、という印象です。観光客は減ったけれど、海が好きな人が来てくれていますから、海が好きな人たちが気分よく過ごせる環 境を作りたいと思います。どのような浜が好きかは個人の好みですから、浜茶屋がたくさんあるにぎやかな海 水浴場を望む観光客には和田海水浴場をお薦めしています。また一方で、にぎやかさが苦手なので白浜 海水浴場に来たという人たちがいます。白浜海水浴場は比較的にのんびりと過ごせるため、そのような環 境が好きな人に来ていただければよいと思います。

ブルーフラッグ取得に対して

ブルーフラッグについては、昨年の7月頃に開催された会合で初めて聞きました。ブルーフラッグが取得できればよいと思います。世界遺産に登録されると観光客の増加につながると聞いています。住民の多くが、ブルーフラッグは観光客を呼ぶ一つの手段だと思っています。取得することで観光客は増えるかもしれませんが、私はブルーフラッグが観光客を呼ぶ「手段ではない」と思っています。住民が「高浜町の海を世界基 準の郷土の遺産として守っていく」という認識をしっかり持てれば良いと思いますし、ブルーフラッグ認証取得がそのきっかけになるとよいと思います。 ブルーフラッグによって観光客が来るか、来ないかは問題ではありません。例えば、高浜町民1万1千人の中でも、夏の間に頭まで海に浸かった人は、そんなに多くはないと思います。高浜町民にとって、海は身近にあって当たり前の感覚で捉えており、ないのと同じ感覚で日々を過ごしています。様々なイベントを実施することは、観光客を呼ぶにはよいかもしれませんが、海や浜を郷土の遺産にするのであれば、高浜町民が 1 日中海で遊ぶ日を作る、など高浜町民対象の「夏版ふれあい広場」のようなイベントをしたら良いと思います。

地域の海を近しくする

和田小学校では、広い砂浜で「砂浜運動会」を開いています。12年程前にテレビの番組で「自分の学校の誇れるものは?」という企画があり、和田地区のある家庭の子どもたちは「和田小学校の誇れるものは砂浜運動会だ」と言っていました。大人の運動会である「和田地区町民体育大会」を和田浜で行う。砂浜での町民体育大会は 3 回ほど実施されました。砂浜なのでケガの心配も少なく、雨が降っても大丈夫です。私は砂浜で体育大会をすると良いと思っています。しかし、反対の声も多くあります。理由は、お弁当に砂が入る、足腰の弱い高齢者が砂の上を歩くのが大変、といったことです。地区委員会では毎年、運動会をグラウンドでするか砂浜でするかを協議しますが、平成15年を最後に、12年間砂浜で運動会 は行われていません。和田地区にきれいな砂浜があるのに、地元の人が砂浜で遊ばないという現状では、他地域の人に和田 地区の海や浜へ遊びに来てほしいと言えないと思っています。和田地区の浜はとても景色が良く、その景色を見ながら運動会ができるのは最高です。地元で砂浜運 動会の企画運営を請け負いし、企業などの砂浜運動会などを開催してはどうかと思います。企業の社員 は民宿で宿泊し、地元住民と一緒に楽しめるイベントに参加するといった企画を企業等に提案してはどうでしょうか。砂浜運動会は、グランドではできない海を使った競技ができ、運動会の様子をテレビ等に取り 上げてもらえば情報発信にも繋がります。ブルーフラッグもそれが何であるかという話ではなく、ブルーフラッグと自分の生活が直結しないからなかなか理解されない、自分たちの生活に関係ない、と思われてしまう状 況にあります。

高浜町の課題…。

ブルーフラッグは、「今ある環境をより長く後世に残すための少しの後押し」のようなもので、雇用や経済 などの効果を期待したら住民は息切れし、期待外れであると言い出し、ブルーフラッグ取得を目指す動き への反作用が大きくなると思います。ブルーフラッグ認証の要件に、「住民の理解」があるのは、海の近くに住む住民が、必ずしも海を好きで なく、海を遺産として誇りに思っていないからではないでしょうか。ブルーフラッグ認証を取るためには、海を 理解して好きになって地域全体で取り組むべきという指導であり、住民の海への意識や理解を「後押し」するようなものです。ブルーフラッグ認証を最初から観光に直結すると考えるべきでなく、ブルーフラッグは、「世界基準の郷土 遺産」としてのきれいな海を残す、という本来の目的に沿って取り組めば良く、その結果として観光客が増 える状況を生み出せれば有り難いと考えたほうがよいと思います。

高浜国際交流協会の活動とは…。

高浜国際交流協会は10年前に創設されました。当時、高浜町の人口1万1千人に対して、外国の方は350人ほどいました。しかし今は162人まで減っています。162人の外国人のうち、40人程度が企業で研修をしています。南米の国々の日系人でワーキングビザを持っている人や、高浜の男性と結婚し た外国籍の女性もいます。外国の方にブルーフラッグについての話はしていませんが、ALT(外国語指導助 手)のシン・クォン・チャン氏は、ブルーフラッグ推進部会に参加しています。高浜国際交流協会は2本立ての活動をしています。1つは、町内に住む外国の方が住みやすい環境 を作るためのコミュニケーションの場づくりです。2つ目は、海外交流です。高浜町は、韓国の保寧市を友 好都市としていて、訪問者が来ることもあります。中学校ではオーストラリア派遣をしています。高浜町に20年以上暮らしている外国の方と一緒に、その方の母国を訪問するという事業も行っています。今までにペルーや中国を訪問しました。高浜国際交流協会のスタッフは全員ボランティアでイベントなどを開催しています。毎年1月にウインタ ー・ホリデーズ・パーティーを開催しており、120~130人ほどが参加します。本格的な着物の着付けや地 域のコーラスグループ、女性グループの銭太鼓などの舞台発表も行っています。夏はサマー・ホリデーズ・パ ーティーを開催して、100人ほどで砂浜 BBQをします。外国の方々も、高浜の海が好きだと言っています。

海外からのお客様には…。

ブルーフラッグを高浜町のPRに活用したい。ブルーフラッグを取得することで、高浜町に行ってみたいと思 う外国人が増えることを期待します。高浜国際交流協会のメンバーは外国人を受け入れる体制づくりに貢献できると思います。高浜町に来ていただいた外国の観光客が楽しんで頂き、帰国後も高浜での楽し かった経験を話していただけるようにしたいと思います。ヨーロッパ、カナダの方は何かをするというのではなく、ゆっくりと過ごすことが好きだそうです。同じ場所にゆっくり滞在したい方もおられるようで、観光名所めぐりばかりをする日本人とは違うようです。今、高浜町にはホテルが少ないですが、外国の方はホテルではなく、民宿に泊まるのが良いと聞きます。また束縛されるように、決まったスケジュールで観光し、移動することをあまり好まないようです。以前ALTに来ていただいたアメリカ人夫妻に、高浜での生活はどうかと尋ねると、自分たちが「独立した人間」として扱われていないような気がする、と言っていました。周りの人が世話をやきすぎるのだと思います。外国の方 は自分の意志で自分の行動を決めたいようです。外国の方へのおもてなしに意気込む必要はないのかも しれません。

ブルーフラッグ取得に向けての課題は…。

私自身多忙で、ブルーフラッグ推進部会に参加できていませんが、ブルーフラッグ推進部会内でいかに共 通認識を持つことができるか、が重要課題だと思います。今はメンバー内、地域住民間で共通認識を作る時期だと思っています。認識を共有することなしに次の段階に入ると、意識がバラバラになりうまくいきません。話し合いの中で、共通認識をもつことができたら、そのあと広めていく作業をしていけば良いと考えています。

【インタビュー協力】環境省中部環境パートナーシップオフィス(EPO中部)